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2025/09/22

AFEELA 開発の舞台裏。ソニー・ホンダモビリティが Azure OpenAI で「相棒のような」対話型パーソナル エージェントの搭載を実現

2022 年、ソニーグループとホンダが共同出資し設立したソニー・ホンダモビリティ。同社は、従来の車の移動を「手段」から「目的」と位置づけ、その空間に新しい価値を提供することを目指している。「人とモビリティの関係の再定義」をスローガンに掲げ、同社のモビリティブランド「AFEELA」を開発中。パーソナルな移動空間をより豊かで楽しいものにするため、生成 AI を活用した対話型パーソナル エージェントの搭載を決定。開発パートナーには、AI 技術で先頭を走るマイクロソフトを選択した。

ソニー・ホンダモビリティは、人とクルマの間で自然なコミュニケーションを実現する対話型パーソナル エージェント「AFEELA Personal Agent」を開発。Azure OpenAI、Azure Cosmos DB を基盤とした仕組みの構築にはマイクロソフトのチームの大きな支えがあった。スクラム開発により毎週目標達成と改善を繰り返すことで、人と自然な会話を実現するパーソナルなエージェントを実現する。

2025 年 1 月、ソニー・ホンダモビリティは同社初の EV となる「AFEELA 1」を発表。マイクロソフトのプリセールスチームによる約 1 年間の技術支援と、2024 年 9 月からの共同開発チームの協働により、創業からわずか 2 年での開発を実現。販売でも、クルマをディーラーに納めて終わりという従来のビジネスモデルから脱却し、新車購入後も体験が継続・向上する継続型モデルを構築中。共同開発後もカスタマーサクセスチームが伴走し、人に寄り添う AFEELA の強みを最大化する道筋を描いている。

Sony Honda Mobility

自動運転時代に向けて人とモビリティの関係を再定義

ソニー・ホンダモビリティが創る「AFEELA」は、既成概念を超えた存在です。生成 AI を搭載し、人と会話する EV (電気自動車)。その特徴の一つは、従来のタスク型ではなく対話型であることにあります。生成 AI に指示を出すだけでなく、AI と雑談を交わしながら楽しい移動時間を過ごすという、これまでにない新たな体験を提供します。

「タイヤのついたロボット」。ソニー・ホンダモビリティ代表取締役 社長 兼 COO を務める川西 泉氏は、同社が開発するモビリティブランド「AFEELA(アフィーラ)」をそう表現します。AFEELA に搭載する、生成 AI を活用した対話型パーソナル エージェント「AFEELA Personal Agent」は、ソニー・ホンダモビリティとマイクロソフト、両社のエンジニアが一つのチームを組んで開発したものです。

2025 年 1 月に開催された世界最大級のテクノロジー見本市「CES」で、ソニー・ホンダモビリティは「AFEELA 1」を発表しました。納車予定は、米国は 2026 年中旬から、日本では 2026 年中です。人とモビリティの新たな関係がいよいよ始まります。

エンタテインメントを主要事業に位置付けるソニーと、二輪・四輪メーカーのホンダ、両社の事業ベクトルは大きく異なります。しかし、ものづくりに対するチャレンジ精神や、犬型・人型 (二足歩行) ロボット開発への取り組みなど、共通点も多くあります。自動車産業が大きな変革期を迎える中、2022 年、ソニーグループとホンダの共同出資により、ソニー・ホンダモビリティ株式会社が誕生しました。

設立意義は「多様な知で革新を追求し、人を動かす」という同社のパーパスに込められています。「多様性の時代において、ソニーとホンダという 2 社を中心に、マイクロソフトをはじめとするパートナーと連携し、最先端技術を駆使して新しいものを生み出していきます。また、『人を動かす』の『Move People』は、“物理的移動”だけではなく“人の心を動かす”という意味も含んでいます。AFEELA の真ん中にある英単語の “FEEL” は、人を動かす根源となる感情を表しています」(川西氏)

従来の自動車との本質的な違いについて、川西氏は言及します。「誕生以来、車は人が運転することを前提とした移動手段でした。運転する喜びは今でも変わりませんが、技術革新による自動運転の実現により、運転から解放される『移動時間の過ごし方』が多様化していきます。電車や飛行機よりもパーソナルな空間となる車に対し、ソニー・ホンダモビリティだから実現できる価値を提案したいと考えています」

高橋 正樹 氏, IVIシステム開発部 モビリティアプリケーション課 シニアマネジャー, ソニー・ホンダモビリティ株式会社

“これほどのスピード感をもって開発に漕ぎつけることができたのは、ソニーとホンダ両社のエンジニアがものづくりを通じて互いに認め合い、醸成した共感があったからこそと思います。また、マイクロソフトには、AFEELA 1 リリースに向けて大きな推進力をいただいたと感じています。”

川西 泉 氏, 代表取締役 社長 兼 COO, ソニー・ホンダモビリティ株式会社

対話型パーソナル エージェントという革新的アプローチ

自動運転により人が運転から解放された時、人とモビリティの関係はどう変わるのでしょうか。川西氏は「インタラクティブ (双方向) をキーワードに挙げます。「インタラクティブな関係におけるコミュニケーションでは、会話が基本となります。私は、ソニーで音声対話ロボットの開発を担当しており、目指していたのは AI を活用した自然な会話でした。ブレークスルーとなったのが、LLM (大規模言語モデル) の登場です。ChatGPT やマイクロソフトが提供する Azure OpenAI などのリリースは、大きな社会的インパクトをもたらしました。また、ソニーが PC 事業を手掛けていた時代から、マイクロソフトと密に連携していました。これまで培った信頼関係も踏まえ、生成 AI で先頭を走るマイクロソフトと一緒に『人と自然に会話するモビリティ』を開発したいと考えました」(川西氏)

「AFEELA Personal Agent の特徴は、過去の会話を記憶し、その人に合わせた対話ができることです。目指したのは、『音楽をかけて』といった指示や質問への回答はもちろん、気軽な雑談ができるエージェントです。助手席に座る友人や相棒のような存在として位置付けています」とソニー・ホンダモビリティ IVIシステム開発部 モビリティアプリケーション課 シニアマネジャー 高橋 正樹氏は説明します。

「人によって興味のポイントは異なります。AFEELA Personal Agent は、その方との会話を通じて嗜好や考え方、行動パターン、気持ち、状態などの情報を収集・学習し、個人に寄り添ったコミュニケーションを行います。例えば、『おなかがすいたね』と話しかけると、『ラーメンが好き』という過去の会話を覚えていて『近くにおいしいラーメン屋がありますよ』と教えてくれたり、『いつもラーメンを食べているから、今日は定食屋に行きましょう』と提案してくれたりを考えています。パーソナル エージェント自体がエンタテインメントなのです」

課題は、会話のトピックが偏りがちになることです。「解決策の一つが、AFEELA に搭載したカメラやセンサーなどのデータ活用です」と、ソニー・ホンダモビリティ IVIシステム開発部 モビリティアプリケーション課 桂裕樹氏は説明します。

「これまでの AI エージェントは、基本的に音声やテキスト中心のコミュニケーションでした。AFEELA Personal Agent は、移動する時間と空間を会話する相手と共有します。『夕日がきれいですね』と、エージェントから自然に話しかけることができるのです。体験を共有することで、より深い関係性を構築できると考えています。人間同士の関係と同じですね」

高橋 正樹 氏, IVIシステム開発部 モビリティアプリケーション課 シニアマネジャー, ソニー・ホンダモビリティ株式会社

“人によって興味のポイントは異なります。AFEELA Personal Agent は、その方との会話を通じて嗜好や考え方、行動パターン、気持ち、状態などの情報を収集・学習し、個人に寄り添ったコミュニケーションを行います。例えば、『おなかがすいたね』と話しかけると、『ラーメンが好き』という過去の会話を覚えていて『近くにおいしいラーメン屋がありますよ』と教えてくれたり、『いつもラーメンを食べているから、今日は定食屋に行きましょう』と提案してくれたりを考えています。パーソナル エージェント自体がエンタテインメントなのです。”

高橋 正樹 氏, IVIシステム開発部 モビリティアプリケーション課 シニアマネジャー, ソニー・ホンダモビリティ株式会社

マイクロソフトとの共同開発チームによる技術的課題の克服

「人と自然会話する」というコンセプトは、AFEELA の大きな競争力となります。会社設立から数か月後の翌年 2023 年の CES でプロトタイプを披露するといったスピード感を実現した原動力の一つとして、ソニー・ホンダモビリティとマイクロソフトの共同開発チームがあげられます。「マイクロソフトのエグゼクティブとも AFEELA 開発における戦略的連携に関して話をしています。しかし、これほどのスピード感をもって開発に漕ぎつけることができたのは、ソニーとホンダ両社のエンジニアがものづくりを通じて互いに認め合い、醸成した共感があったからこそと思います。また、マイクロソフトには、AFEELA 1 リリースに向けて大きな推進力をいただいたと感じています」(川西氏)

「最初は意見のぶつかり合いがありました」と、高橋氏は開発スタート当初を率直に振り返ります。

「AFEELA Personal Agent は、音声認識や発話で Azure OpenAI を活用しています。車内 (エッジ) でエージェントと会話したデータは、インターネット常時接続により Azure が提供するフルマネージド型 NoSQL データベース サービス Azure Cosmos DB に蓄積されます。そのデータをエージェントが使用し、会話を返す仕組みです。私たちが特にこだわったのは、低いレイテンシーの実現でした。これは会話の速度に関わるからです。当初はエッジとクラウド、互いの視点が異なっていたためギャップを感じていました。しかし、新しいものを創造するという共通の思いで、一つ一つの課題を乗り越えていくことで、最終的には一つのチームになったと実感しています」

AFEELA Personal Agent のベースは音声認識です。人の話を聞く精度が低い場合、返答する会話も求められるものとは異なってしまいます。「複数社の音声認識エンジンを比較した結果、Azure AI Speech - Embedded Speech は認識率が高いことがわかりました。認識率の次にテーマとなるのが意図理解です。エージェントに対して『これ止めて』と言った場合、音楽、動画、車など、何を止めればよいのかを適切に判別できないことが課題となります」と高橋氏。

それを受けて、ソニー・ホンダモビリティ E&Eシステムアーキテクチャ開発部 SWプラットフォーム課 尾崎 智也氏は次のように話します。

「一緒に開発を進めたマイクロソフトのデータ サイエンティストとエンジニアは、Azure ベースの機械学習サービスである Azure Machine Learning を使って、意図理解の重要なポイントとなる、AI モデルの学習用データ セットと評価用パイプラインの作成に取り組みました。当社の AI モデル開発と組み合わせることで、雑談できるレベルまで到達することができました。今後は、意図理解のさらなる向上を図っていきます。また、生成 AI は急速に進化しているため、AI モデルを柔軟に変更できるシステム構成にしていただきました」

桂 裕樹 氏, IVIシステム開発部 モビリティアプリケーション課, ソニー・ホンダモビリティ株式会社

“これまでの AI エージェントは、基本的に音声やテキスト中心のコミュニケーションでした。AFEELA Personal Agent は、移動する時間と空間を会話する相手と共有します。『夕日がきれいですね』と、パーソナル エージェントから自然に話しかけることができるのです。”

桂 裕樹 氏, IVIシステム開発部 モビリティアプリケーション課, ソニー・ホンダモビリティ株式会社

共同開発から得た学びと将来展望

今回の共同開発では多くの学びがあったと尾崎氏は話します。「開発から運用までのプロセスを効率化する Azure DevOps を使って AFEELA Personal Agent を構築しました。開発過程では上手くいかないこともありましたが、それに対するマイクロソフトのエンジニアによるアプローチはとても参考になりました」

高橋氏は、マイクロソフトから提案があったスクラム開発を評価します。「ウォーターフォール型は細かく計画を立てて数年をかけて開発します。対話型パーソナル エージェントは、最初から正解があるわけではなく、改善を繰り返して品質を高めていくアプローチとなります。スクラム開発により、チーム一丸となって数週間のスパンで目標を決めてやりきることで、コンスタントかつ効率的に進行することができました」

AFEELA は、販売して終わりというビジネスモデルではありません。「エージェントと運転手や同乗者との間で交わされた会話データは、新しい車種を購入してもクラウド上に残すことができます。体験の継続とともに、サービス改善、パーソナライズ化された価値提供などのメリットを享受できます。今後も、人に寄り添う AFEELA の強みを最大化していきたいと思います。AFEELA の進化に向けて、これからもマイクロソフトとの密な連携を期待しています」(川西氏)

今回の開発に携わったソニー・ホンダモビリティのメンバーは次のように話します。「多くの学びがあり、開発もスピーディに進みました。もう一度、同じような体制で一緒に開発をやりたいと思っています」と高橋氏。尾崎氏は、「今後、AFEELA を通じてデータが集まってきます。マイクロソフトと一緒に面白いことができるのではないかと感じています」と期待を込めます。桂氏は、「カメラやセンサーなどから膨大な情報がクラウドに上がってきます。データ処理が重要なポイントとなるため、マイクロソフトの支援が必要になると考えています」と将来を見据えます。

友だちのように自然に会話する日本発 EV。人とモビリティの新しい関係を築く AFEELA を、マイクロソフトはこれからもテクノロジーの提供を通じて支援していきます。

尾崎 智也 氏, E&Eシステムアーキテクチャ開発部 SWプラットフォーム課, ソニー・ホンダモビリティ株式会社

“開発から運用までのプロセスを効率化する Azure DevOps を使って AFEELA Personal Agent を構築しました。開発過程では上手くいかないこともありましたが、それに対するマイクロソフトのエンジニアによるアプローチはとても参考になりました。”

尾崎 智也 氏, E&Eシステムアーキテクチャ開発部 SWプラットフォーム課, ソニー・ホンダモビリティ株式会社

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