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2025/08/12

東京都教育委員会は、新たな教育の実践と校務の効率化に向けて都立学校 16 万人が活用する安心・安全な「都立 AI 」を Azure OpenAI で構築

東京都教育委員会では、GPT-3.5 がリリースされた 2022 年 11 月の時点から教育現場における生成 AI の取り扱いについて、いち早く検討を開始。2023 年 6 月には文科省のガイドラインに先立ってChatGPTなど生成AIの取扱いについて都立学校に通知しています。さらに同年 9 月から「生成 AI 研究校」を指定して、教育現場における生成 AI 活用を積極的に研究してきました。

1 年半に渡る「生成 AI 研究校」の取り組みを経て、教育現場における生成 AI 活用の手応えを得た東京都教育委員会は、文部科学省が策定した「生成AIの利活用に関するガイドライン(Ver. 2.0)」を受けて、全都立学校 (256 校、児童・生徒・教職員 約 16 万人) を対象に生成AI 活用を行うことを決断。そのインフラを構築するために 2024 年 3 月に一般公開入札を実施。落札したのは Azure OpenAI を活用した事業者の提案でした。

Azure OpenAI を活用した「都立学校向け生成 AI (都立 AI)」では教育現場に最適化された生成 AI 体験の設計や、セキュリティとガバナンスを徹底することで安心・安全な環境を実現。さらに教職員が校務効率化のために作成したプロンプトを共有できる機能などを実装することで、新しい学習の在り方と校務の効率化を同時に推進する一助として機能。都庁DXアワード2025「サービス部門」にて知事賞を受賞しています。

Tokyo Metropolitan Board of Education

子どもたちの未来を優先した、生成 AI に対する迅速な取り組み

東京都教育委員会は、かねてから教育のデジタル化を強力に進め、学び方・教え方・働き方の一体的な改革に取り組んできました。生成 AI についても、GPT-3.5 が 2022 年 11 月 30 日に無料公開されるとすぐに教育現場への影響などの議論を重ね、授業等における取り扱いの検討を開始。

翌 2023 年 6 月には、児童・生徒が夏休みの課題に対して生成 AI の回答をそのまま提出しないように注意喚起を行うと共に、すべての教員が生成 AI への理解を深められるように資料を作成して全都立学校に通知しています。これは、文部科学省が「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン(Ver. 1.0)」を策定するよりも、1 か月早い対応でした。

東京都教育庁 総務部デジタル推進課 デジタル企画担当課長 瀧田 健二 氏は、次のように振り返ります。

「生成 AI という魅力的なテクノロジーに、児童・生徒が惹かれない理由はありません。それに、彼らが成長して社会に羽ばたく頃には “当たり前” の技術として浸透していることでしょう。情報リテラシー / 情報活用力を教育すると共に、生成 AI を教育現場にも活かしていくことは、教育の現場に携わる私たちが避けることのできないテーマです。そのため GPT-3.5 が公開されるとすぐに議論を始めました。翌年の 6 月に東京都独自の資料を通知したのは、教員たちが夏休みの準備を始めるタイミングに間に合わせるためでした。そして、7 月に文科省からガイドラインが公表されると、それを参照しながら次のステップに進んでいきました。それが 2023年 9 月から開始した『生成 AI 研究校事業』です」

東京都教育委員会では 2023 年 9 月に 9校、そして翌 2024 年度には新たに 11 校を加えた 20 校で生成 AI の教育活動での活用に関するパイロット的な取り組みを実施。

この 1 年半におよぶ取り組みを通じて大きな手応えを得たこと、そして 2024 年 12 月に改訂された「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン(Ver. 2.0)」にて「パイロット的取り組み」の文言が削除され、全面的な活用推進が可能となったことを受けて、さらに大きな取り組みへと進んでいます。

それが、2050年代に目指す東京のビジョンを示した「2050 東京戦略」を推進する取り組みとなる「都立学校向け生成 AI 利用サービス」の構築です。

そして、この取り組みのために実施された一般公開入札 (2025 年 3 月) において、総合的に最も評価が高く選ばれたのが、Azure OpenAI を活用するコニカミノルタジャパン株式会社による提案でした。

瀧田 健二 氏, 総務部デジタル推進課 デジタル企画担当課長, 東京都教育庁

“生成 AI という魅力的なテクノロジーに、児童・生徒が惹かれない理由はありません。それに、彼らが成長して社会に羽ばたく頃には “当たり前” の技術として浸透していることでしょう。情報リテラシー / 情報活用力を教育すると共に、生成 AI を教育現場にも活かしていくことは、教育の現場に携わる私たちが避けることのできないテーマです。”

瀧田 健二 氏, 総務部デジタル推進課 デジタル企画担当課長, 東京都教育庁

16万人が活用する「安心・安全」な生成 AI 環境の実現

東京都教育委員会が構築した「都立学校向け生成 AI 利用サービス (都立 AI)」は、256 校の児童・生徒・教職員 約 16 万人が活用する非常に大規模なシステムであり、閉域の ICT ネットワークに接続する端末が 約 1,300 台、BYOD によるネットワーク接続端末が約 25 万台にも及びます。

これだけの規模で運用する生成 AI 環境を構築する上で、東京都教育委員会が特に重要視したのが下記の 4 項目です。

・教育現場に最適化された、ありものではない、都独自の生成 AI 体験の設計

・セキュリティとガバナンスを担保した、唯一無二の生成 AI 運用環境

・最先端の GPT へのモデル切り替えやマルチモーダル化対応の柔軟性

・ログデータ取得と教育ダッシュボード連携も視野に入れた、真似ができない都独自の AI へ育てることができる拡張性

都立 AI は東京都専用のテナント上に生成 AI 環境 (Azure OpenAI) を構築することで、自治体単位での安全・制御された運用を実現しています。

東京都教育庁 総務部デジタル推進課 主任指導主事 岡村 健 氏は「第一に、児童・生徒たちに安心・安全な環境を提供することが不可欠だった」と説明します。

「教育現場に最適化するという点においては、例えば児童・生徒が『不適切な言葉』を都立 AI から引き出そうとしても回答しないようにフィルターを掛けるといったことが 1 つ。そして、生成 AI がネットから誤情報を持ち込まないように、都立 AI が教科書などの信頼できるデータを参照できるように、私たちの手で都が管理するデータを追加・管理できるようにしていることが挙げられます」

また、セキュリティとガバナンスに関しても徹底していると、岡村 氏は続けます。

「データセキュリティに力を入れていることは当然として、児童・生徒たちが授業の中で入力したプロンプトや学習内容を都立 AI に再学習させないように保護するなど、ガバナンスも徹底できるようにカスタマイズしています」

最後に、重要なポイントとなるのが「GPT モデル切り替えやマルチモーダル化対応の柔軟性」と「都独自の AI へ育てることができる拡張性」です。瀧田 氏は次のように説明します。

「生成 AI が進化する速度は、驚くほどに早いものとなっています。都立 AI も、このスピード感に対応しなければいけません。その点、Azure OpenAI は拡張性に優れていて、非常に柔軟な運用が可能です。2025 年 5 月に都立 AI を全都立学校に展開した時点では、GPT-4o mini 以上の性能が利用可能となっていますが、このまま足踏みするつもりはありません。年度の途中であっても Azure OpenAI の拡張性を活かして、最新の GPT モデルへと切り替えていくことを見込んでいます。また、現場の教員の声を聞いて、機能を随時アップデートしていくことも考えています。さらに言えば、2024 年から一部の都立校で運用が開始されている『東京都教育ダッシュボード』とデータを連携し、生徒指導により深く役立てていくプランも視野に入っています」

研究校の取り組みを踏まえて実践する「自分で考える力」を育む授業

教育における生成 AI 活用の有効性を示す資料として、東京都教育委員会では「生成 AI 研究校事業」で実施された事例を 35 件 (2025 年 6 月時点) ほど公開しています。

授業の内容は、生成 AI そのものに対する理解を深めるものから、数学・理科・社会・国語・英語など、それぞれの教科における学びを掘り下げるために生成 AI を活用したものまで、多岐にわたります。

東京都教育庁 総務部デジタル推進課 統括指導主事 中村 伸也 氏は「児童・生徒の “考える力” を伸ばすために役立てられた事例も多い」と説明します。

「興味深かった事例の 1 つに、“春はあけぼの” で始まる『枕草子』がなぜ名文と言われるのかを検証するという、中学校の授業がありました。この授業ではまず、プロンプトを工夫した上で『枕草子』を書かせて、それを原文と比較することで清少納言の発想・表現・構成を分析しています。さらにその後で、生徒が自分流の『枕草子』を書いてみて、自分のモノの見方や表現の特徴を分析しています。また、ある高校の授業では、第一次世界大戦に至るまでの歴史的事象の因果関係の理解を深め、歴史をより深く学ぶために生成 AI を活用するものがありました。生成 AI に “ロシア革命が起きなかったら、第一次世界大戦はどうなっていたか?” “第一次世界大戦が起きなかった場合、歴史はどのように変わっているか?” といった質問を行い、戻ってきた内容をグループで検討するというユニークなものです。仮説とシミュレートが個人の想いによって起こされる、この授業を通じて、歴史的事象を多面的・多角的に検証することができたのではないでしょうか。こうした授業では、生成 AI が膨大なデータを参照して提示する回答が、児童・生徒たちの思考と発想を深めることに貢献しています。これは、従来のようなグループワークでは実現できなかったことです」

そのほかにも「生徒が DNA の構造を表す模式図から、DNA の構造の特徴や規則性を見いだして表現した内容を生成 AI が評価する」という授業や、「作成した英文を生成 AI に添削してもらう」といった内容まで、生徒が生成 AI と対話を重ねることで、今までできなかった個に寄り添う学びと、生徒自身も興味をもってより深く考え、新しい発想を得られるようになっていく事例などが公開されています。

瀧田 氏も次のように話します。

「例えば授業中に行き詰って “この考え方で合っているのかな?” と手が止まってしまう児童・生徒もいるでしょう。その時、先生に質問してみたいけれど忙しそうだから遠慮してしまう。あるいは、手を挙げて質問するのは恥ずかしい子もいるでしょう。そういった時なども、都立 AI に質問をすれば回答が返ってきます。返ってきた答えに納得ができなければ、何度でも質問をすることができます。そうやって都立 AI と対話を重ねることで、思考力を深めることもできるでしょう。少なくとも、自分で考えるための材料が何も見つけられず、立ち止まってしまうようなことが少なくなるでしょう。聞くという恥ずかしさは、答えを得た知識が重なると、自信となって今度は、聞けるようになるでしょう。そうやって、児童・生徒の “考える力” が育まれていくことも期待しています」

校務の効率化を後押しする、教職員による生成 AI 活用

そして都立 AI に期待される効果は、学び方・教え方の変革に留まらず、教職員の働き方の改善にも及ぶと、岡村 氏は説明します。

「都立 AI の特長の 1 つに、教職員が自分で考えたプロンプトなどを共有できる機能があります。都の教育に特化した生成 AI プロンプトがポータルに、校務効率化や各教科の授業用など、利用目的別に分類して投稿できるようになっています。将来的には、都に提出する書類なども公開されたプロンプトなどを使って効率よく作成していただけるようになるのではないでしょうか。ダウンロードしたプロンプトは、自分で使用する際に改良することもできますし、目的に合わせて改良したプロンプトをまた投稿して、アイデアの交感を進めてもらえるようになれば理想的だと思います」

都立 AI を全都立学校に展開するにあたって、東京都教育委員会では、「生成 AI 研究校事業」で得られた経験や「文部科学省が 2024 年 12 月に公布した「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン(Ver. 2.0)」を基にして、「都立学校生成 AI 利活用ガイドラインVer.1.0」「生成AI研究校初回授業モデル指導案」「生成 AI について学ぼう!」という 3 種の資料を作成。これらの資料に基づいて、 2 回の機能説明と、受講者のレベルに合わせた研修 (初級・上級) を各 3 回ずつを実施しています。

しかし、このサービスを本当の意味で教育現場に浸透させるためには、そうしたガイドラインの配布や研修を行うだけでは「十分ではない」と岡村 氏は話します。

「今回のような新しいサービスが現場に浸透して、活用を深めてもらうには『教職員にとっての利便性』を備えることも大切です。その点において、上述のような機能を実装することができたのは良かったと思います。それに、IT システムはどれも “導入して終わり” ではありません。今後、教育の現場を支えてくださっている教職員の方々の声を取り入れながら、機能の追加・改善を重ねていきたいと思います」

岡村 健 氏, 総務部デジタル推進課 主任指導主事, 東京都教育庁

“都立学校向け生成 AI 利用サービスの特長の 1 つに、教職員が自分で考えたプロンプトなどを共有できる機能があります。都の教育に特化した生成 AI プロンプトがポータルに、校務効率化や各教科の授業用など、利用目的別に分類して投稿できるようになっています。将来的には、都に提出する書類なども公開されたプロンプトなどを使って効率よく作成していただけるようになるのではないでしょうか。”

岡村 健 氏, 総務部デジタル推進課 主任指導主事, 東京都教育庁

10 年、20 年先を見据えた教育環境を

こうして、教育現場における学び方・教え方・働き方の改革への多大な貢献が期待される「都立学校向け生成 AI 利用サービス」は、驚くほどのスピード感で全都立学校に展開され、本格活用が始められています。

このスピード感は、常に先進的な取り組みを進めている東京都ならではのものだと言えるでしょう。しかし、児童・生徒のことを考えれば「この一連のプロジェクトが、早すぎることはない」と中村 氏は言います。

「都立 AI の活用によって、児童・生徒にとって『楽しく、将来的にも役に立つ授業』の実現と、教職員の校務改善が両立されるとうれしいです。一方で、民間と教育現場とでは、生成 AI 活用のスピードにある程度の差があるとも感じています。児童・生徒を取りまく社会に、生成 AI がすでに浸透していることを考えれば、今できることから着手して教育現場に反映していくことがとても大事だと思っています」

最後に、瀧田 氏は情報活用能力 / 情報リテラシーを教育することの重要性を、改めて強調します。

「私たち自身、教育委員会の職員を採用するにあたって情報リテラシー育成のための教材作成にも取り組んでいます。その経験からも強く感じるのですが、SNS が日常に溶け込み、ネットで検索すれば生成 AI によるまとめが検索サイトのトップに表示されるような現在、情報に関するモラルや IT と AI のリテラシーを高めることはとても重要です。児童・生徒たちにも、そうした教育をどうやって行っていくか、今まさに問われている時期なのだと思います。都立学校で学ぶ児童・生徒たちには、10 年後、20 年後には社会に飛び立ち、世界で活躍できる人材になって欲しいと願っていますからね」

※「都立学校向け生成 AI 利用サービス」は、都庁DXアワード2025「サービス部門」にて知事賞を受賞しています。

中村 伸也 氏, 総務部デジタル推進課 統括指導主事, 東京都教育庁

“都立 AI の活用によって、児童・生徒にとって『楽しく、将来的にも役に立つ授業』の実現と、教職員の校務改善が両立されるとうれしいです。一方で、民間と教育現場とでは、生成 AI 活用のスピードにある程度の差があるとも感じています。児童・生徒を取りまく社会に、生成 AI がすでに浸透していることを考えれば、今できることから着手して教育現場に反映していくことがとても大事だと思っています。”

中村 伸也 氏, 総務部デジタル推進課 統括指導主事, 東京都教育庁

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